アイドルが歌う曲と少女幻想−「アイドリング!!!3時間15分SP」感想

Imamu2007-01-11

2007/01/06/25:45〜29:00(深夜1:00〜5:00)フジテレビ放送「アイドリング!!!3時間15分SP」。
http://www.fujitv.co.jp/tokuhen/06win_new/b_hp/0106idolingsp.html
番組のエンディングで「ハレ晴レユカイ」を歌っている映像が
一部で話題(はてなブックマーク)になっているのを知ったので
当初、感想を書く予定はなかったが、記録として残しておこうと思った。
はてなブックマーク - YouTube - [IDOL] 晴レ晴レユカイ - Idoling Full Version


私はこの放送3時間15分全て見たわけですが(←本当に暇だな。死ねよ)
この番組で「アイドリング!!!」のメンバーは6曲歌っている。
(各曲はコーナーの途中に挟んだ形で歌われている)

<テロップ−20世紀アイドル名曲でオープニング>
1.「セーラー服を脱がさないでおニャン子クラブ(1985)


<テロップ−20世紀アイドルの名曲をカバー>
2「17才」南沙織(1971)・森高千里(1989)→3「DIAMONDS(ダイヤモンド)」PRINCESS PRINCESS(1989)
4「アジアの純真PUFFY(1996)→5「EQUALロマンス」CoCo(1989)


そして、エンディング前「この後あの名曲を披露」のテロップ後に
6「ハレ晴レユカイ平野綾(涼宮ハルヒ)・茅原実里(長門有希)・後藤邑子(朝比奈みくる)(2006)

3時間近くテレビを見続けて最後にこの曲が流れた時に、率直に
「最後、アニメのエンディング曲かよ!!」って思った。
フジテレビ狙ってんなぁコレ、絶対ネットでネタにされることを意識しただろうなぁ」と。
(しかし、公式ホームページを見てみると、番組オープニング曲に何を歌わせたいか視聴者から募集している項目があった。
今回のSPはこの募集の結果が反映された選曲なのか?それとも、無関係なのか?よく解らない。
私はアイドリング!!!を見たのは初めてだった。)
公式サイト『http://www.fujitv.co.jp/idoling/index2.html


だが、細かい事情は置いといて
「21世紀に発売された、みんなが何となく知っていて、アイドルに歌わせたいような曲ってあるのか?」
とよくよく考えると、ぱっと思い浮かばない。
もちろん、21世紀にもアイドルグループはいるだろうし、売れたグラビアアイドル等がCDを出したりしてる。
だけど「みんなが知ってる」という条件を満たしている曲というと・・・・?


だから、21世紀に発売されていて、アイドル系のお嬢さん方に踊って歌わせる曲として
ハレ晴レユカイ」が選択されたのは
ハルヒ効果ってすげぇなぁ」という感想以上に興味深いものだった。

<アイドルが歌うような曲>は現在アニメ声優さんが歌ってる?

林原めぐみ椎名へきるなどが作った土台のおかげなのか?
今はアニメの声優さんが<アイドルっぽい曲>を歌う<歌い手>として機能している感じがある。


・アニメの声優さんに<アイドル幻想>を押し付けてる
・従来のアイドル産業の手法がアニメの声優さんの売り出し方にも使われている


とりあえず、上記のような仮説を提示するだけで、放置プレーにしましょう。


この話題と関連して、
80年代のアイドル歌謡曲が大好きだと豪語する中川翔子さんは
そういえば「田村ゆかり」の曲も聴いてるみたいだなぁ、なんてことも思い出した。


後、どうでも良い情報として
平野綾(涼宮ハルヒの中の人)は以前、おニャン子クラブに曲を提供していた後藤次利プロデュースで
CDアルバムを出している。因みに後藤次利椎名へきるにも曲を提供している。

そういえば、番組全体の感想書いてなかった

・ゲストの中川翔子さん
「アイドルでガンダムを語れたら、多分一生食べていける」(女の子のガンダム枠は空いてる)
・ゲストの国生さゆりさん、城之内早苗さん、生稲晃子さん
「スタッフに取り入れ」「今はADでも、後々偉くなる」
「キャスティング権を握っているのは偉くなった彼ら」



アイドル歌謡曲じゃないけど、それに近い感じの曲を歌うヴィジュアル系

「シド」「メリー」「アンティック珈琲店」あたり。「アイドル歌謡」は言い過ぎかもしれないけど。
特に面白いのは、歌詞が<女の子主体>で書かれたものがあるってこと。
しかもその<女の子主体の歌詞>ってのは、少女まんがに出てくるような
ロマンティックで、でも傷つき易い思春期真っ只中って感じのものがあったりして。


<少女幻想>に同一化したいんだよね。<アイドル歌謡>が好きなのってそういうこと(私はね)。
ただ、ヴィジュアル系の場合は<カワイイ女の子>の振る舞い(外見含め)を行ないたいが
性自認は男>で<ヘテロセクシュアル>であることが多い。
<どんな外見を呈示するか>と<性的指向>は別の問題なのじゃ。

女装少年ブームというのは「男性性からの逃避願望」とナルシシズムが結びつくことで、
自分が愛すべき対象としての「美少女」になりたいという欲望が生まれた
(中略)
女装少年に萌える人々は「女」ではなく、
あくまで虚構の性とでも言うべき「(美)少女」になりたいわけだ
http://d.hatena.ne.jp/arctan/20070107/1168151261

私はマンガをあまり読まないので、女装少年もののマンガ作品については何も言えないが
引用元の記事は私が何となく感じてることを、言語化したものじゃないかと思っている。

「恋人を獲たい」という「欲望」は少女的視点からすれば「卑しいもの」だ。
それに対し「憧れの人のように成りたい」というのが少女型意識の「願望」である。

高原英理『少女領域』−序「少女型意識:自由と高慢」より)

高原英理氏の言うところの「少女型意識」。

女装少年ブームがあるとして、
そこには「現実の女性嫌悪と表裏一体の女装(より望ましい女性性の表現)」の意味合いと、
これまで「少女」イメージに置き換えられてきた「素敵」という少女的価値を、
自ら体現することが可能なもの(男性らしさの修正)と考える意味合い
という
少なくとも2つの要素があるのではないか。
http://d.hatena.ne.jp/nogamin/20070109/1168346269

こちらの記事も大変参考になった。後でもう一回しっかり読もう。
つまり、ヴィジュアル系の一部の人は(ヴィジュアル系って言っても色々あるけど、とお茶を濁す
既存の「男らしい」身体的表象のかわりに、「虚構の性=少女的」な身体表象を用いて(自ら体現して)
だけど<男>としてパフォーマンスを行なっているのではないか?
なんて思ったりした。


そうすると、女性アイドルの一部の人は(アイドルって言っても色々あるけど、とお茶を濁す
<女>が「虚構の性=少女らしい」身体的表象を用いて(自ら体現して)
パフォーマンスをしている人なのか?

と思った。


――07/01/13/追記――
ここで、安易に<男性>ヴィジュアル系と<女性>アイドルを同列に語ってしまったことを反省した。


何故なら、歴史的に<虚構の性=少女>は<女性>だけに背負わされてきたものだから
<女性>が<虚構の性=少女>を体現する状態は、<男性>のソレよりも
より重荷(正の意味でも負の意味でも)であろうと思う。


だから<少女幻想>は<女性>を抑圧する<男性>に都合のよい産物に過ぎず
そのような悪しきものは解体すべきだという意見は、きっちりと傾聴しなければいけない。
ここで<男性>側の反論として考えられるのは
例えば女性アイドルたちは、ある意味<幻想>を見せることでそれに見合った収入を得ている。
つまり、「騙し騙され」の状態であるから、お互い様ではないか、という類のものだ。
これに対して<フェミニズム>等の反論として
「そういう経済構造、それ自体が男性中心主義のもとにつくられたものである」などが想像できる。


仮想上の討論はこれくらいにしておいて、このアホアホ日記を書いているオマエはどうなんじゃい!


私は<少女幻想>を<女性>だけに背負わせず、<男性>にも背負わせるのはどうか?
などと独り言を呟いてみたい。
何故<男性>にも<少女幻想>を背負わせるのかと言えば、それによって
<少女幻想>のマイナス部分の意味をズラせる可能性があるのではないかと思っているからである。
<少女幻想>のおいしい所だけ搾取する<男性>にならないためにも。
もちろん、こういう言説自体が<男性側からの一方的な妄想の産物>だと言われても仕方が無い。
だが、男性同性愛を題材とした女性向け雑誌「JUNE」の版元であるマガジン・マガジンから
マリスミゼルを特集した『MALICE MIZER 耽美実験革命』が出版されたことは
ただの「同人・ポルノ的なお遊び」以上の何かしらの可能性が示唆されているのではないかと考えている。

――07/01/13/追記終了――


これとは別の話だが、「男性性からの逃避願望」の手段として「睾丸除去」を望むというものがある。
ジョシュア・ポール・デール/黒岩裕市訳
「付けておくか、切ってしまうか - 新しいジェンダー・ポリティックスにおける去勢とファルス」
によれば、「睾丸除去」をしたユーナックとは

男性性を拒絶し、女性性を採用せずして、しかしなおも男性のアイデンティティを保持する男性

だという。


マチズモ的抑圧に対して、どのように対処するのかという方法も色々あるもんだね。

ヴィジュアル系が好きなのは男でも女でもない中性的な存在だからだろ、
って話をカウンセラーにした覚えがある。
(中略)
男するのが嫌になっちゃって、
でも女になりたいかって言うと圧力かけられてた恨みみたいなのもあるからそれも嫌。
で、性別を越えたところの存在に憧れるようになると。

http://d.hatena.ne.jp/narrheit/20070109/p1

実はこちらの記事に触発されて、少し考えてみました。なんか間違ってる気もするが。おしまい