『死化粧師オロスコ』上映イベント and 釣崎清隆 x 松嶋初音トークショー
・日時:2008/03/28,20:45〜23:00頃,uplink x
・釣崎清隆監督作品『再発版 死化粧師オロスコ』発売記念,上映イベントandトークショー
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- 発売日: 2008/03/28
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:死体写真の「キレイさ」を語る松嶋初音さんを生で見れただけで私には1500円の価値があった。
彼女は熱い。トイレに釣崎さんの死体写真を貼ってあるという話を聞いて完全に惚れた。素晴らしいセンスだ。
:(映画)死体を処理する過程。「手馴れた作業」といった調子でやっていく様は圧巻。
昔、寿司屋でバイトしていたとき、裏で板前さんが魚をさばいているのをずっと見ていたが
それと似ている。ただ違うのはそれが、魚か人間かというだけで。
別に人間の死体を卑下しているわけではなくて、
魚の死体をありがたく食すのと同程度には人間の死体にも敬意を払いたいといった意味で。
「この街には何もないけど、死体だけは山ほどあるぜ!」
夜八時を過ぎると街は極端に危険度を増し、開いている店はほとんどなくなり、まっ暗闇になる。
奴らは百鬼夜行の夜のボゴタの一部になる。
しかし彼らは別に悪人というわけでもない。ただ、本気で未来を信じてはいない。
死因の第一位がガンでも脳卒中でも心筋梗塞でもなく、殺人。
つまりコロンビア人は「いつか誰かに殺される」と当たり前のように思っているのだ。
ほとんどのコロンビア人は敬虔なカトリックであるが、
たぶん彼らには我々にはわかりえない神や死の理解があるに違いない。感覚が違う。
(釣崎清隆『死体に目が眩んで――世界残酷紀行』リトルモア,2000,p126)
- 作者: 釣崎清隆
- 出版社/メーカー: リトルモア
- 発売日: 2000/12
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――――――――以下、トークショーの断片メモ垂れ流し――――――――――
(釣崎)松嶋さんのブログで自分のことが書かれているのを見ていた
(釣崎)10万円の写真集(『10 stories of DEADLYSPEED』)を貢がれてましたよね
(松嶋)「貢がれた」とか言わないで下さい
映画感想
(松嶋)オロスコかっこいい
(松嶋)オロスコをエンバーミングする人がいないというのが、考えさせられる。
・・・
(釣崎)
(オロスコは)エンバーミングされることを望んでいなかったのではないか?
「消えてなくなりたい」というようなことはよく言っていた
(松嶋)親がスプラッター大好き
(釣崎)80's前半、ブームでしたからね
(松嶋)娘(つまり松嶋初音さんを)を13日の金曜日に産もうとして・・・
・・・
(釣崎)(親は)ゴスですか?
(松嶋)いや、そういうわけではないんですけど・・・
(松嶋)ジブリなんかは絶対見せない。
(松嶋)エクソシストをケラケラ笑いながら見ている。
小学生のころ初めて見た死体
(松嶋)(電車の飛び込み)「きれい」「スローモーションみたいに感じて」
その後ケータイサイトに死体画像サイトを作る
(松嶋)ケータイで死体画像を探す→あまりいいのがない→自分で魔法のiらんどで作る。
(松嶋)色んなところから転載しまくって・・・→人気が出る→バレる→閉鎖
(釣崎)ケータイサイトはチェックしてなかったなぁ
(松嶋)自分のサイトの中の「管理人のおすすめ」は釣崎さんの写真が多かった
ネットで死体画像を集める人って・・・
(釣崎)
自分は作品として、他と差別化をさせようとしているが、
死体画像を「見ている人」は死体をアーカイヴとして見ているのか?
リストカット
(松嶋)
自分のサイトの掲示板に書き込んでくる人は「キ●ガイ」が多かった。
その人のサイトなんかに行くとリストカットした画像や動画が・・・
(釣崎)
10年前くらいは、(釣崎さんの)公式サイトを通してメールくれる人はリストカッターが多かった。
最近はそうでもないけど。
死体の写真展をやると――「お化け屋敷」気分
(釣崎)
死体を撮っているカメラマンは都市伝説に近い(ように皆感じているらしい)(実際ここにいるのに)
・死体と対決する「男」・・・死体写真の前で牛丼食ったり。
・死体と話し合う「女」
(藤原)
他者というのはどこにあるんだと、そして〈死体〉も他者なんだという、
その一歩から〈死体〉を見てほしいわけ。それで最終的に即物性の死が見えるという、
そこまでは何か一歩一歩があると思うんだよね。
二十代のコが突然悟っちゃうと、困るんだよね(笑)。
(藤原新也,布施英利「死体を語る」――布施英利『死体の見方』東京書籍,1998より)
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日本で死体写真を撮ろうと模索した時期も
(釣崎)日本は仕事が早い→諦めというか・・・
国ごとに特色がある死体
・タイ→交通事故
・コロンビア→銃で撃たれてなきゃ
・日本
→樹海(4,5月)
→電車飛び込み(飛び込みの写真は撮り難い)
→→逆に「飛び降り」は時間掛かるから撮りやすい。だけど結局飛び降りないパターンが多い。
(松嶋)死体に何を感じますか?
(釣崎)究極の被写体
(布施)
結局、創られたヴァーチャルなものと本物の死体の、
その真ん中にあるもの、やっぱりリアリティというのはそこにあると思いますね。
(藤原新也,布施英利「死体を語る」――布施英利『死体の見方』東京書籍,1998より)
・・・
(松嶋)
(死体は気持ち悪いと言うけど)例えば自分の知っている人の死体は気持ち悪いと思うのか?
二人称と三人称の死体の違いは、例えば死体が道に転がっていたとき、
二人称の死体なら近づくだろうが、三人称の死体なら身を引くだろう。
家族の者が死んでいれば抱えて生死を確かめたり、抱きしめて悲しむだろう。
しかしあかの他人の死体なら、怖いとはいわないまでも、身を引いてしまうのではないか。
このように死体は、三つの人称に分けて考えることができる。
そして現代社会で「隠されている」というのは、特に三人称の死体だ。
(釣崎)写真になってフィルターがかかると胡散臭く見えちゃうのかも・・・
日本でエンバーミングは成立するのか?
(釣崎)
日本のエンバーマーの人と話したんだが
「死を受け入れられない人のために」「ある程度時間を置くために」
という受容に応えるかたちであるらしい。
(松嶋)マンガでもありますね。最近ドラマにもなってた。
(釣崎)「死化粧師」はオレがつくった造語なんだけどねぇ・・・
(釣崎)
そのマンガのスーパーバイザーが(釣崎さんと)対談したエンバーマーの人らしい。
その人は「死化粧師オロスコ」を公開当時見ていたみたいで知っていた。
だから、微妙に知っているかもしれない。
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愛は両刃の剣だ。愛のために人を殺す強さを獲得し、悲しむ優しさを保つことができる。
サルサの発祥の地であるともいわれるコロンビアの人々の愛(アモール)は
触ると火傷しそうなくらいに熱い。
コロンビアの幻想は血まみれのユートピアを実現しつつあるこの国で見る、
セックスとドラッグとサルサにまみれた夢である。
いまわしい現実の中で、狂乱の踊りの輪から一人また一人と脱落して息絶えていくのが見える。
――――――――終――――――――――――――
参考リンク
・X51.ORG : "死体なき国の死体写真家" ? 釣崎清隆インタビュー
http://x51.org/x/07/07/2635.php
・死化粧師オロスコ - OROZCO EL EMBALSAMADOR - 釣崎清隆監督作品
http://www.orozcoelembalsamador.com/
・釣崎清隆公式サイト
http://www13.ocn.ne.jp/~turisaki/
右上の写真は公式サイトから転用してしまいました
関連する以前の日記
・『Modern Freaks (モダン・フリークス) Vol.1』付属DVD鑑賞中
http://d.hatena.ne.jp/Imamu/20071205/p1
釣崎清隆さんが書いている記事が載っている雑誌の紹介
・小谷真理×高原英理ト−クショウ「ゴシック精神・傷・身体・人形」
http://d.hatena.ne.jp/Imamu/20070325/p1
このトークショーの後半に死体の話がある。
そこで「ポルノ的な死体」と「美しい死体」を分けている点を
今回のトークショーと関連して考えてみる。
・「バラバラ-人体-傷-美しい」三浦悦子『聖体礼儀』
http://d.hatena.ne.jp/Imamu/20070319/p1
少女への偏愛→人形への偏愛→死体への偏愛
・「クラブきっず」と「人体の不思議展」を分けるものは何だろね?
http://d.hatena.ne.jp/Imamu/20061206/p1
最低な人間の戯れ言