宮崎勤−「聞蔵DNA for Libraries」1989

引用元、手順

朝日新聞のオンライン記事データベース「聞蔵 DNA for Libraries」
キーワードは「宮崎勤」で
「1989年1月1日〜1989年12月31日」の条件のもと検索しました。
http://www.asahi.com/information/db/forl.html


日時の古い順に100個ほど、ざっと眺めたうえで(全部目を通せなかった)
気になったものをピックアップしていきます。
また、一個の記事の全文を載せているわけではありません。
記事の中で目に付いた部分だけを、勝手に省略しつつ載せます。
少しデータベース内の文章の構成と違う所があるかもしれません。
申し訳ありません

野本綾子ちゃん殺害容疑者を追及 26歳の男が犯行自供(1989年8月10日 夕刊 1総)

調べによると、宮崎は7月23日午後4時50分ごろ
八王子市内で少女2人に「写真を撮ってやる」と近づき
妹を山林に連れ込んでいたずらしようとした、として
八王子署に強制わいせつ未遂の疑いで逮捕された。

なるほど、最初から殺人で逮捕されたわけではないんだね

「綾子ちゃんを誘拐、殺して遺体をバラバラにして捨てた」と供述を始め

(中略)

「6月6日、自分の乗用車で江東区の『有明テニスの森公園』に行った。
その後、東雲団地に行き、綾子ちゃんを誘って車に乗せた。
車内で何かのことでバカにされてカッとなり、首を絞めて殺した。
自宅で死体をバラバラにして捨てた」という。

(中略)

宮崎は昨年夏から埼玉県内で相次いだ入間市の今野真理ちゃん(当時4つ)
川越市の難波絵梨香ちゃん(当時4つ)の誘拐、殺人事件
飯能市の吉沢正美ちゃん(当時7つ)の行方不明事件についても犯行をほのめかしている

(中略)

今年2月6日、自宅玄関前に遺骨などを入れた段ボール箱が置き去りにされたうえ
自宅と朝日新聞東京本社(東京・築地)にそれぞれ2度にわたって
「真理ちゃんを殺した」とする「犯行声明」と「告白文」が送り付けられた。

なるほど。

孤独に潜む異常さ 綾子ちゃん事件(緊急報告 幼女誘拐殺人)−友はアニメ・ビデオ 宮崎、付き合い避け無口(1989年8月11日 朝刊 1社)

「無口で、おとなしい青年」「いるか、いないのかわからない男」
(中略)友人は少なく、マンガやアニメ、幼児を性の対象にした雑誌類にのめり込む、孤独な26歳。
非行のそぶりさえ見せなかった宮崎という男は−−。

この出だしは、酷いゾ

宮崎は両親と妹2人の5人暮らし。妹らと自宅母屋裏の離れに住んでいた。6畳1間が宮崎の城。

「6畳1間が宮崎の城」って表現に何故か笑ってしまう

自宅近くの「あきがわ書房」では10日、「常連」が来ないことが話題になっていた。
宮崎は毎月10日、決まってこの書店を1人で訪れ、
この日が発売の月刊アニメ雑誌アニメージュ」「アニメディア」の2誌を買っていた。
どちらもテレビアニメのファンを対象とした専門誌で、読者は中学、高校生が中心。

今ならさしずめ「月刊ニュータイプ」か?


そんな彼は職場ではどうだったのだろうか?

58年から61年まで勤めていた、東京都小平市の印刷会社
(中略)
「親から頼まれて5年の約束で入ったんですが、きつい仕事ですからもたなかったんでしょう。
身長が160センチ足らず。入社の時は20歳くらいでしたがまるで子供みたいだった」
(中略)
「とにかくこちらから話しかけないと何も言わない。
昼食も1人だけ離れて隅で食べてましたし、仕事が終われば真っすぐ家に帰って、仲間とつき合うことはなかった。
一度だけ、裏山のタヌキが自宅の床下に住みついて子供を産んだと言って、
写真を持ってきたことがありました。話をしたのはそれぐらいです」

職場ではタヌキの話しかしませんでした。


そんな彼の大学時代は?

宮崎が画像技術を学んだ東京工芸大学短期大学(東京・中野)
(中略)
「初めは、クラスの何人かが声をかけたし、食事にも誘ったが、彼の方が応じなかった。
友だちはだれもいなかった。休み時間も、黙って1人どこかへ消えてしまっていた。
授業で質問もしたことないし、いるのかいないのかわからない存在だった」

「いるのかいないのかわからない存在」でした


そんな彼の中学時代は?

宮崎が卒業した東京・中野の明大付属中野高校
(中略)
中学の卒業アルバムに、宮崎は「君とぼくには未来がある」と書いた。
中学校の記録には、担任の教諭に「マンガ新聞を作りたい」と話していた

「マンガ新聞を作りたい」んだそうです。

                • -

後、個人的に「中野区」というのが引っかかる。

部屋の片隅に「浄香童女霊位」警視庁、宮崎逮捕発表 幼女誘拐事件(1989年8月11日 夕刊 1社)

部屋の片隅には、「浄香童女霊位」と書かれた紙の下に、綾子ちゃんの写真。

なんて読むのかすら解らない文字が

ひと目、宮崎を… 市民500人、八王子署前 綾子ちゃん事件(1989年8月12日 朝刊 東京)

西多摩郡五日市町小和田の印刷業手伝い宮崎勤(26)は11日、八王子署から捜査本部のある深川署に移送された。
(中略)
たまたま運転免許証の更新に来たという市内の会社員(42)は
「ふだんはごく普通の人間なんだろうが、何かのはずみで精神的なゆがみが現れたのではないか。
本人自身はもちろん、社会にも何か問題があったのではないか」と話していた。

事件当初は、[異常な犯罪=個人の素質]という安易な結びつきではない考えの人もいた模様

異様な感じで捨てたかった 宮崎、綾子ちゃん事件で詳しい供述次々(1989年8月12日 朝刊 2社)

宮崎は自室にアニメを中心としたおびただしい数のビデオ作品を収集していた。
その中にはホラー映画もあり、取り調べに対し
「『ギニーピッグ』というシリーズの中の『悪魔の女医さん』という作品で
死体を切り刻む場面があったことを覚えている」と答えた。

ギニーピッグ。久しぶりに聞いた。
そうか。宮崎氏はギニーピッグ見ていたんだ。

人も「モノ」、快楽殺人 ゆがむ空想(緊急報告 幼女誘拐殺人)(1989年8月14日 朝刊 1社)

13日午後、汗にまみれ、肌着姿になった捜査員がビデオテープ、雑誌類を丹念に調べながら段ボール箱へ移した。
(中略)
ビデオテープの数4500本。青年が築き上げてきた「ひとりぼっちの世界」が
照りつける太陽の下で解体され、運び出されていった。

捜査員の方ご苦労様です。

 宮崎は、ビデオを見るだけでは物足りなくなり、自分で撮影して数本を作った
と供述したという。それらが「自分の宝物だ」とも。
裸の幼女が水辺でたわむれる「ベビードール」
路上に置かれた段ボール箱に内臓が入っている、などの場面のあるホラー映画「悪魔の女医さん」
幼女アニメ「麗夢」、成人向け「ジーナ・セクシーライブ」「CMギャル・カタログ」
ロリータ物「マリアン」……宮崎が見たビデオのごく一部である。

そして残りのビデオはごく普通の(犯罪と結びつきそうにない)映像でした。というオチなのか?

 月刊「ロリくらぶ」は毎号2万3000部。
少女のヌード写真や、幼児との性愛を描いたマンガの載る雑誌が、流通経路に乗って街の本屋さんにあふれている。読者は若者が多い。
幼児性愛、幼児への犯罪は昔からあった。だが最近、「ひとりぼっち人間」型がめだって多い、と亜細亜大の柳本正春教授はいう。
 教授によると、都市化が進み、個人への社会の干渉が弱まるにつれ、自分だけの閉鎖的な世界に閉じこもる若者が増えてくる。
成熟した女と付き合えない成熟しない男たちは、自分が支配できる幼児たちに向かうのだという。
 たしかに、宮崎は「ひとりぼっち人間」だった。閉じこもった世界はアニメ、写真、ビデオである。
だが、こうした幼児性、孤立性だけでは説明できないのが犯行の残虐さだ。

月刊「ロリくらぶ」。気になりますw

多くの精神鑑定を手掛けてきた筑波大の小田晋教授はこう分析する。
性倒錯者は相手を「モノ」として見る傾向がある。
宮崎は遺体を自室に何日か置いていたというが
自分のモノとしてコレクションにしていたのだろう。殺すだけより、小さく解体する方が、よりモノに近くなる。
性衝動と、殺してバラバラにする攻撃衝動、所有欲が、ここでは手を結んでしまっている。典型的な「快楽殺人」だ。


人によっては、3つの衝動の1つが刺激されると他の衝動に波及してしまう。
今の時代、ビデオなど、性衝動をかきたてる材料は身近にあふれている。「ひとりぼっち人間」は空想の中で生きる。
ビデオが山と積まれたあの部屋は、空想をかきたてる場所だったはずだ、という。

はい。小田晋大先生の登場です。有難う御座いました。

コレクター宮崎、ビデオ収集に自己顕示欲(緊急報告 幼女誘拐殺人)−珍品を武器に交換 要求“法外”、独占欲も(1989年8月15日 朝刊 1社)

関係者によると、ビデオ愛好家はビデオショップで買ったり借りたりするほか、ビデオサークルに所属し
その会員のネットワークを通じてコレクションを増やしていくのが一般的だ、という。
ビデオサークルでは、月に1、2回の割合で会報を発行。この中で、各会員は自分の欲しいビデオのダビングなどを呼びかける。
また、自分の住んでいない地域で放送されるテレビ番組を録画したい場合
該当する地域に住む会員にテープを郵送し、録画を依頼する「代録」(代理録画)と呼ばれるシステムも普及している。

ビデオサークル。「インターネットが出現する前」という時代の空気を感じますね。
宮崎氏もこのシステムを使っていたらしい。

あるビデオサークルの会誌には宮崎が次のような呼びかけを行っている。

「『セブン第12話』『流星人間ゾーン』など特撮アニメを100種類所有」と自己PR、「地方の人とも交換望む」と書いている。


余談だが、
>>「ウルトラセブン第12話」は、内容に問題があるとして再放映されなかったため
>>マニアの間では「幻のビデオ」とされている。
のだそうだ。


彼はビデオサークルではどんな感じだったのか?

宮崎とビデオを交換していた埼玉県内の郵便局員(26)は
昭和61年秋、宮崎に「ウルトラセブン第12話」など30分番組計3本のダビングをしてもらった。
その代わり、テレビ埼玉で放映中の「刑事犬カール」など計3本のアニメ番組を1年間録画するよう求められ、次々と生テープを送りつけられたという。
結局、2時間のテープを10本以上も送るはめになったこの郵便局員
「一方的な要求ばかりするエゴイスト。ほんとにいやになりました」。
昨年3月には、とうとう宮崎との交流を絶った、という。

嫌われてたんかい!

宮崎の影響で珍現象 ビデオ店、ホラー人気 綾子ちゃん事件 埼玉(1989年8月15日 朝刊 埼玉)

綾子ちゃん誘拐殺人事件で、逮捕された宮崎勤(26)が
自宅に所有していたホラー映画のビデオ、「ギニーピック」シリーズ「悪魔の女医さん」。


この作品の中で「死体を切り刻む場面を覚えていた」という供述が報道されて以来
川越、狭山、入間、飯能の4市にある約50軒の貸しビデオ店ではこの作品を借りていく客が
あとを絶たず、貸し出されっ放しという店が続出という珍現象が起きている。


一応、ギニーピッグについて少し調べてみたら結構シリーズで出ている。

・Guinea Pig ギニーピッグ/悪魔の実験 プロデューサー:小椋悟 (1985)
・ギニーピッグ2 血肉の華 監督: 日野日出志 (1985)
・ギニーピッグ 戦慄!死なない男 監督: 久住昌之 プロデューサー: 小椋悟(1986)
・ギニーピッグ 悪魔の女医さん 監督: 喰始 プロデューサー: 小椋悟  (1986)
・ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚 監督: 日野日出志 プロデューサー: 小椋悟(1988)
・ザ・ギニーピッグ2 ノートルダムのアンドロイド 監督: 倉本和比人 プロデューサー: 小椋悟(1988)


どうやら、第一作(悪魔の実験),そして第二作(血肉の華)が最も残虐度が高いもので
第三作(戦慄!死なない男)と宮崎氏が見ていたという第四作(悪魔の女医さん)は
割とコメディー路線なんだそうです。

その後の二つは新シリーズみたいです。


他にも拾いきれてない作品があるかもしれないが、もういいや。


因みに[guinea pig]=モルモット; 実験材料になる人 by goo辞書

ホラー物はビデオ全体では極めて特殊な分野なのに
これでは愛好家に対する「偏見」が生じかねない、と危ぐする声も出ている。

ポルノ的な商品や残虐シーンがあるゲームの規制といった
現在でも語られている話は、ここでも語られているようです。

県西部の貸しビデオ店では、捜査本部から会員名薄の提出を求められたところもあり
また、報道機関からの問い合わせに追われる状態が続いている。

あらら。会員名簿の提出かぁ。
このあたりは、色々と議論が分かれるところかもしれませんね。

「宮崎の世界」を押収 ビデオ約6500本検証へ 綾子ちゃん事件(1989年8月16日 朝刊 2社)

宮崎の自宅の捜索は同日朝から、6時間がかりで行われた。
自室内にあるのはビデオテープ、マンガ、アニメ雑誌などなど。
マジックで「アニメビデオ」「少女雑誌」「少女写真」などと大書された段ボール箱
次々に詰められていった。中には「めんこ類」も数箱あった。

ん?「めんこ類」? 随分男の子っぽい遊びをやっていますね。
と思ったが、先天性撓尺骨癒着症らしいので、コレクションとしてかもしれません。

幼女殺害事件でホラー映画の放送中止 NHK衛星テレビと日本テレビ (1989年8月16日 朝刊 2社)

短い記事なので全文引用します

NHKは、衛星第2テレビで15日から5日連続で放送を予定していた「真夏の夜のB級ホラー映画」特集を中止し
悪魔のいけにえ2」などの米映画5本を、「卑弥呼」などの邦画に差し替えることを決めた。
NHK視聴者広報室は
「幼女殺害事件の宮崎勤容疑者の犯行が、ホラー映画とかかわりがあることが明らかになったため、社会的影響を考えて変更した。中止した作品は、時期を見て放送したい」と言っている。

     
また日本テレビは16日午前2時5分から放送予定だった
ホラー映画「13日の金曜日完結編」(米)を中止、ほかの映画に差し替えることを決めた。

ホラービデオ、有害図書へ 幼女誘拐事件で県検討 埼玉 (1989年8月18日 朝刊 埼玉)

昭和58年に施行された県青少年健全育成条例に基づき
「青少年の性的感情を著しく刺激」したり「青少年の粗暴性または残虐性を甚だしく助長」したりする図書やがん具類については
知事が「有害図書」「有害がん具」などに指定。県報に公告するなどの措置をとっている。

そして伝説へ・・・じゃなくて、そして規制へ・・・って感じです。

定義がはっきりしないホラービデオを一律規制するには困難な面があるほか
規制することで犯罪が抑えられるか疑問視する意見もある、という。
このためポルノと同様、一律規制は避ける。ホラービデオを作品ごとに個別に検討したうえで、有害図書に指定。
その上で、レンタルビデオ店に自主規制を求めることになりそうだという。

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結局、調べていくうちに宮崎氏本人じゃなくて
それに伴って起こった現象の方に関心が移ってしまった。

おしまい。